病と名付けは、切っても切れない関係にある。新宮市役所1階で「アルツハイマーデー展示会」が行われ、認知症に対する正しい理解の普及を図っているが、認知症にもかつては名前がなかった。
病気はそもそも、自然に存在するものではない。人がある症状や状態に対して「異常」と判断を下し、それを認識して名前を付けるから結果的に病気の診断が下される。大学時代専攻していた心理学の授業で、いやというほど聞かされた。
ここから考えると、病気を病気と認めるために大切なのは「名付け」と「認知」ということになる。これには思い当たるところがある。例えば現在「うつ病」と呼ばれている症状には以前は名前がなく、発症者は「根性なしだ」とされていた時代があった。
「生老病死」というように、生きていく上で病は逃れられない問題だ。人間が常に異常をはらんでいる以上、どんな病も他人事ではない。かといって悲観することもない。結局大切なのはその人がその人らしい人生を送れるかどうか。少なくとも市役所の展示はそう訴えかけていると感じる。一人一人が病を正しく認知し、正しく理解することが求められる。
【稜】