太地町の道の駅で、イルカのすき焼き定食を食べた。独特な香りとだしの風味が口に広がる。伝統ある太地町の追い込み漁は、今月1日に解禁した。
捕鯨に関しては、昔から賛否が分かれるようだ。太地町は捕鯨の町として海外でも知られているが、批判的に取り上げられることも多い。「捕鯨は許せない」という主張の根拠は何か。
個人的には、この問題における捕鯨と豚の屠殺(とさつ)の違いがわからない。鯨類の漁が反対を受けるのに、豚や牛を家畜とすることがそこまで言われないのはなぜだろう。
今はスーパーで簡単に肉が手に入るが、それが元々生き物だったことについては、頭で理解していても実感はない。現代はそれほどまでに「死」と「生活」を切り離している。捕鯨の議論を引き起こす本質的な原因はここにあるのではないか。市場・流通の発達によって、この「生き物は生き物を殺して食べている」という自然が忘れられてしまっている。
反論もあろうが、ここで持論を展開する理由が「イルカのすき焼き定食がメニューから外れないでほしい」という切なる願いであることを断っておく。平たく言うと、「また食べたい」。
【稜】