朝、目を覚ましトイレに入っている時に、足の指の付け根部分にある虫刺され箇所に小さな痛みを感じた。最初はかゆみを寝ぼけて痛みだと勘違いしているのだろうと思っていたが、勘違いにしては痛みが長く続いている。さすがにおかしいと思い、ようやっと目を向けてみると、アリが刺された箇所を食べていた。
単なる虫刺されならアリも寄っては来なかっただろうが、当方の虫刺され箇所は靴を履いて歩いた時にすれて薄い傷跡みたいになっていた。アリはその部分を美味しくかじっていたのだろう。
この時、寝起きながらに恐怖と歓喜を感じた。アリ一匹に噛まれただけでも不快感を覚えるほどの痛みを感じるのだから、アリの大群に餌として襲われたらひとたまりもないだろうという恐怖。と同時に、虫の捕食対象に自分(厳密には自分の粘膜なのだろうが)が入っているという事実が、まだ自分は自然とつながりのある生命なのだと思えてうれしかった。
虫が血を吸うために刺していった場所をまた別の虫が餌として食べに来ているのだから、相当虫たちの経済に貢献している。たまにはアリに食べられるのも悪くないものだ。
【稜】