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紀南抄「感染症には『誠実さ』で闘う」

 昨年から今年にかけ、人類は1918年インフルエンザパンデミック以来103年ぶりの地球規模パンデミックに見舞われている。これはトリ由来の遺伝子をもったH 1N1によって引き起こされた。

 全世界に張り巡らされた鉄道、船舶交通網と第一次世界大戦のために瞬く間に世界中に伝播し、わずか2年間で5億人もしくは全世界人口20億人の3分の1が罹患、最大の推計値で世界で5000万人から1億人、日本だけで48万人が死亡したとされている。このパンデミックの破壊力は、同大戦の終結を早め、べルサイユ条約交渉にも影響し、のちのヒトラー政権勃興の原因をつくったという指摘もある。

 古来から伝染病は差別の歴史でもあった。不安感が高まると、混乱が起きるかもしれない。感染の原因になった人や事象を探し出し、それを攻撃するようなことが起こりうる。

 アルベルト・カミュの小説『ペスト』の主人公は「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」と語る。健康的に新型コロナのパンデミックに対処するために、人類が今求められているのは、「誠実さ」で闘うことである。

【茂】

      紀南紗

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