新宮市の熊野速玉大社で4日、那智勝浦町の熊野那智大社で6日、それぞれ「釿始式/手釿始式(ちょんなはじめしき)」が営まれた。装束を身にまとった奉仕者が神前で道具を振るう動作を行い、今年一年の仕事の安泰や平穏無事などを祈願した。釿(ちょんな/ちょうな)は大工道具のひとつで、直角に近い形で曲がった柄の先に平たい刃がついており、この刃を鍬(くわ)のように振り落とし、木材を荒削りする。
熊野速玉大社
新宮建築組合が奉仕
熊野速玉大社では、新宮建築組合(東友一郎組合長)の約20人が参列し、代表の奉仕者がヒノキの丸太に墨を打ち、釿を振るい、仕事始めとした。
同大社の釿始式は元々、同大社を担当した宮大工の小野家が行っていた新年の仕事始めの古儀式。神事に用いていた道具類が鎌倉時代のものであることから、遅くともこの頃から伝わっていると考えられている。儀式は1985年ごろから同組合が引き継ぎ、毎年1月4日に行っている。
この日の儀式には、熊野川流域で伐採された直径25センチ、長さ約4メートル、樹齢約100年のヒノキを使用。修祓(しゅばつ)、祝詞(のりと)奏上に続いて「釿の儀」を行い、ヒノキに酒をかけて祓(はら)い清めたあと、柚木芳文さんと海野芳憲さんが墨を打ち、岡鼻茂幸さんが釿を振り下ろした。
上野顯宮司は、古くからのこの儀式を、同組合が仕事始めの行事としても大事に今に伝えていることに感謝を示し、「鎌倉時代からほとんど形が変わらない道具が残っているのは、木の文化が連綿と伝わっていることの証。今後ますます業界の発展と繁栄をお祈り申し上げます」と伝えた。
東組合長は「釿を触ったことがない若い職人もいる中、伝統行事を伝え残していけたら。物価高など厳しい現状もあるが、業界の発展を願いたい」と話していた。
昔ながらの手作業で皮むき
新宮建築組合は昨年12月30日、新宮市内の工場で、「釿始式」の神事で使用する樹齢100年超のヒノキの皮をはがす作業を行った。
現在は機械で行う作業も、昔ながらの道具を使い行うことで、伝統を受け継いでいこうと毎年恒例。この日は組合員10人が参加し、丁寧に作業を進めた。併せて、竹の棒と木の板、麻ひもを使い「お供え用のお膳」も製作し、儀式に備えた。
東組合長は「手作業で行うことで神事に臨む心構えにもつながる」と意義を語った。
熊野那智大社
宮大工が手釿振るう
熊野那智大社では、古式装束を身にまとった宮大工の棟梁、嶌﨑和馬さんと3人の技手(ぎて)が「手釿始式(ちょんなはじめしき)」に臨んだ。
式を行った拝殿には約2メートルのヒノキの角材が置かれた。修祓、男成洋三宮司の祝詞奏上に続き、「手釿の儀」。嶌﨑さんが手釿を受け取り、角材に振り下ろした後、山口雄太さんが差し金で計り墨を打ち、道尻和雄さんがノコギリを引き、南太一さんがカンナで削るなどの所作を行い、その後、玉串を拝礼した。
式を終えた嶌﨑さんは「今年もさまざまな出来事が起こると思うが、うまいこと事が進んで行くようにと思い作業に取り組んでいきたい」と話した。
