福祉分野から語る
尾鷲市社会福祉協議会はこのほど、尾鷲市立中央公民館で「医療・福祉関係者のための成年後見制度活用講座」を開いた。紀北町出身で一般社団法人三重県社会福祉士会権利擁護センター「ぱあとなあみえ」の井谷礼さんが、成年後見制度について紹介するとともに、社会福祉法に基づく日常生活自立支援事業との違いなどについて説明。参加者に「成年後見制度を利用する架け橋となる活動を」などと呼び掛けた。
成年後見制度への理解を深めてもらおうと企画した。高齢化、要介護高齢者の増加や家族規模の縮小で、身の回りの世話を必要とする独居高齢者や高齢者世帯が増えている。また、判断力の低下で詐欺被害に遭う事例も多い半面、適切な契約を結ぶことや資産管理などを支援する必要が生じたことから、本人の状況に応じて契約面から暮らしを支援する制度として、成年後見制度が設けられた。
井谷さんは「成年後見制度では、判断能力が不十分な人に、後見人等(法廷代理人)をつけて本人の望む暮らしの支援を法律行為や財産管理を通して行う。高齢社会の進展のなかで求められる、判断能力の障害を補うための法律的救済の制度」と説明した。
また、従来の制度では「取引の安全」といった経済的視点が重視されていたが、福祉的な視点が取り入れられたと解説。要点として
- 自己決定の尊重=本人の意思を確認し、自己による決定がなされること
- ノーマライゼーション=全ての人が地域社会で共生し、普通の暮らしを普通に続けることができること
- 残存能力の活用=本人の能力を最大限活用し、できないところを補うこと
—を挙げた。
制度がよく知られていないことにも言及。2023年の津家庭裁判所本庁調べでは、利用者は後見が三重県全体で2354件で、うち尾鷲市は20件、紀北町は18件となっているという。
成年後見人等の職務は「単に財産を管理するのではなく、本人の能力を生かしながら本人の希望に沿った暮らしを支援すること」と述べたほか、後見人等ができる行為、できない行為についても紹介した。
地域の取り組みにも言及。尾鷲市では2021年に成年後見制度利用促進協議会が設置され、23年に中核機関として市社協内に「おわせ生活サポートセンター クローバー」が設立されていると話した。
最後に井谷さんは、医療・福祉関係者は、本人のニーズを具体化させる手段として成年後見制度の活用することや、制度利用の架け橋になる活動をしてほしいと要請。制度の活用が地域共生社会、ウェルビーイングの実現につながればいいと思いを述べた。
