尾鷲市向井、三重県立熊野古道センターの企画展示室で13日から、企画展「尾鷲林業が歩んだ400年」が開かれている。
尾鷲市から紀北町にまたがる森林のうち、ヒノキ民有林を主体として古くから行われ、「ヒノキの芯持ち柱角」に代表される尾鷲林業。江戸時代初期、天然林を利用した製炭など採取的林業から始まった。
植林すればその林を自分のものにできる「植出し権」が紀州藩から村民に与えられて人工造林地が増加。生み出された林産品は、元禄契機に沸く江戸・尾張などの大消費地とつなげる尾鷲港を中心に展開され、土井本家を筆頭とした大山林家や山方・浜方商人の営業活動、それに由来した資本を中核として発展。丸太木場(まるたきんば)、ヤエン、索道、軌道など運搬技術の発展とともに大きく栄え、関東大震災で尾鷲ヒノキを柱材に使った家が倒れなかったことで、名声を定着させた。
大正・昭和期を経て、密植多間伐・短伐期・丁寧下刈・長材搬出・細密採材を施行的特徴とした尾鷲ヒノキ林業を確立。2000年2月に速水林業が国内で初めてFSC認証を取得、2017年3月にこの林業システムが日本農業遺産第1号に認定されている。
企画展では、かつて使われていた木場(きんば)や人力で製板するために使われた前挽大鋸(まえびおが)、背負子、芯持ち柱角材、明治後期から大正年間の山林入札箱、竹製クサビ、古文書など実物をはじめ、紀州藩政策下での尾鷲林業、海上交易と尾鷲林業の盛栄、尾鷲港から回船で運ばれた物産の記録、運材方法などのパネル、明治後期から昭和中期にかけての写真などで、近世から現代まで、400年の歴史を紹介している。
会期は来年3月29日(日)まで。12月31日と1月1日は休館。
付属イベントで2月14日(土)午後1時30分から元禄13年(1700年)創業の濵中林業代表の濵中良平氏による講演会「尾鷲林業の歴史~江戸時代 木と米と税金~」、3月8日(日)午後1時30分から新熊野学講座「尾鷲林業盛栄の遺構~又口川に刻まれた夢の跡~」が映像ホールで開かれる。
いずれも定員80人で、入場無料。講演会は今月21日(日)から、新熊野学講座は1月18日(日)から受け付ける。
申し込みおよび問い合わせは熊野古道センター(0597-25-2666)まで。
