新宮市の神倉神社例大祭「お燈祭り」当日の6日朝、祈願者となる上り子(のぼりこ/あがりこ)と、祭典を運営する神倉青年団と神倉神社奉賛会はそれぞれ祭りに向けた準備を行い、神聖な神事に臨むという気持ちを高めた。
早朝禊で心身清める
新宮市の王子ヶ浜(大浜海岸)では6日早朝、上り子有志による禊(みそぎ)が行われた。30年以上前から実施されており、今年は7人が臨んだ。
寒空の中、日の出前に集まった上り子はふんどし姿になり、祭りの舞台となる神倉神社の方角に向けて遥拝。神職の資格を持つ福井鉄(まかね)さん(紀宝町)の号令で「エッホ、エッホ」と声を出しながら両手を伸縮させる準備運動で体を温めた。続いて、それぞれが気持ちを高めたところで波打ち際へ。福井さんが祝詞(のりと)を奏上する中、水しぶきを浴びながらしばらく手を合わせて潔斎し、ちょうどそのころ、水平線から太陽が昇り始めた。禊を終えた上り子はたき火で冷えた体を温めた。
新宮市の西浦昭好さん(57)は、ほぼ毎回参加しており、「やはり早朝の禊は清々しい。ここ数日の寒さでかなり覚悟して来たが、思ったよりも寒さは感じなかった。家族の健康と景気回復を祈って上りたい」と話した。
王子ヶ浜には禊の様子を写真に収めようと愛好家らが駆け付け、中には外国人の姿も見られた。
協力して準備進める
祭りの運営や警護を担当する神倉青年団と神倉神社奉賛会は6日朝、特殊神饌「かがり御供(ごく)」作りや神倉神社周辺の準備を行った。
かがり御供は、餅を薄く細長くして切り、縦横約3センチ、厚さ約0.5センチに成形。神倉山のゴトビキ岩に降臨した熊野三神にちなんで3段に重ね、細い荒縄を用いて上り子の腰縄と同じ「男結び」で縛った。もち米は合計4升分を炊き、杵(きね)ではなく祭りの警護で使う介釈棒で、団員らが臼(うす)の周囲をぐるぐると回りながらついた。
神倉神社周辺では、のぼりを竹竿に付けて町内に立てた。また、鳥居や手水舎、山門のしめ縄を張り替え、若竹を各所に飾り立てるなど、準備を進めた。縄をなう作業も奉賛会を中心に行った。
青年団の清岡尚寿団長は「今日は天気よく、寒くなると思いますが、ご神火を上り子の皆さんに授けられるよう頑張りたいです」と話した。
上野顯宮司(=熊野速玉大社宮司)は「今年もいいお天気をいただいて、穏やかな祭りになってくれることを祈ります。お燈の火は特別。その神聖な火をいただいた時には、皆さん手を合わせていただきたい。神の尊さを冒涜しない本来のお燈祭りにしたい」と話した。