漫画「ドラえもん」には、たまにドキッとするようなお話もある。個人的に印象に残っているのは秘密道具「どくさいスイッチ」の回だ。
このスイッチは、押すと気に入らない人間を消し去ることができる。消し去られた人は最初からこの世に存在していなかったことになり、その人のことは誰も覚えていない。
この回にはSF的な思考実験の要素が色濃く見られる。のび太はどくさいスイッチでいじめの原因と思われるジャイアンを消すが、すると代わりにスネ夫がガキ大将になって取り巻きを率い、追いかけまわしてくる。のび太は次々に気に入らない人を消していって、最終的に昼寝の最中、みんなから馬鹿にされる夢にうなされ「だれもかれも消えちまえ」と言いながらボタンに手が当たって誰もいなくなり、孤独感にさいなまれる。最後には、実は独裁者を懲らしめるための発明だったのだと言ってドラえもんが出てきて、全員元通りになる。
9月23日は藤子・F・不二雄さんの命日。SFでありファンタジーでありギャグであり教訓めいた寓話性もあるドラえもん。皆さんは好きなお話はありますか。
【稜】