尾鷲市民文化会館で、お笑い芸人の友近さん扮（ふん）する演歌歌手の水谷千重子さんのコンサートがあった。尾鷲は初めて来たそうだが、「尾鷲まるごとヤーヤ便を買っていて、魚もデザートもおいしい」との言葉を聞いてうれしくなった。歌あり、トークあり、ものまねありの１時間半はとても楽しく、途中でぐずりだした子どもに「次の歌を子守歌にしてね」と声をかけて明るく進行していく姿に、芸能界を長年生き抜いている力強さを感じた。

　コンサート中にはバイオリニストやダンサーとの共演があり、丁寧に出演者を紹介し、「生演奏やダンスと一緒にやれるのは楽しいし、力がわく」と語っていた。水谷さん側から「写真はバイオリニストかダンサーと一緒に写っているのを使ってほしい」という要望があった。芸の世界で生きる後輩の背中を押そう、という思いがあったのではないか、と勝手に推察している。

　テレビ越しに活躍する姿は華々しいが、長年愛され、必要とされる人には相応の能力や志がある、ということなのだろう。「ぜひ覚えていってください」と笑顔で語る姿に、実るほど頭を垂れる稲穂かな、ということわざを思い返した。　　　

（Ｒ）