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大逆事件とピノキオ 東大フォーラム 関係性を紐解く

 東京大学の教授や留学生らが自身の研究について発表する「東大人文・若手国際フォーラム」が22日、新宮市役所別館とオンラインで開かれた。会場には約50人が参加。基調講演では、イタリア語イタリア文学の土肥秀行教授が「大逆事件とピノキオ」をテーマに講話し、西村伊作の長女アヤが日本で初めて翻訳した「ピノキオ」と、大逆事件との関係性を紐解いた。
 
 フォーラムは、新宮市と東京大学の連携協定に基づく取り組みの一環。主催は、新宮市と東京大学大学院人文社会系研究科・文学部で、同研究科が20日から23日まで新宮市を拠点に実施の「熊野体験研修」のプログラムとして開催された。

 講演で土肥教授は、イタリア文学の名作「ピノッキオの冒険」(1883年)について解説。原作者のカルロ・コッローディは役人でジャーナリストでもあり、イタリアの独立戦争に義勇兵として2度従軍した愛国心に満ちた人物だったと紹介した。「戦いが終わったあとに何を書くかが重要だった。その中でピノキオが生まれた」と作品誕生の背景を説明した。

 イタリアでは子ども向けに限定されない万人向けの作品だったが、日本では、1910年の大逆事件につながるアナーキスト(無政府主義者者)のサークル内で読まれていたという。イタリアでも1861年の統一後、社会にはアナーキストの運動が活発になり、王族が暗殺される事件が起きていたことにも触れ、当時の思想状況と作品の関わりを示した。

 
伊作の長女が日本初翻訳

 日本で最初に出版された「ピノキオ」は、アヤが10歳の時に手掛けたもので、父から聞いた物語の記憶を元に編集し、自ら挿絵も描いた。現在ではディズニー映画の影響もあり、うそをつくと鼻が伸びるというイメージが定着しているが、アヤはそのシーンを描いていない。原作でも鼻が伸びるのは2度のみで、物語の核心ではないとされ、土肥教授は「鼻が伸びてもピノキオは反省しない。本質を理解していたからこそ重要ではないとカットしたのでは」と考察した。

 英語版を伊作に貸したのは佐藤春夫。伊作が作品に惹(ひ)かれた理由として、「親代わりであったおじの大石誠之助が大逆事件で犠牲となったあと、くびきを逃れた者としてどう生きるか模索していた時に出会った作品だった」と述べ、新宮の地で最初の翻訳が生まれたことについて、「敏感でありながら中央になびかない、この土地ならでは」と見解を伝えた。

 また、アヤが描いた結末にも言及。ピノキオはきちんと学校に通って読み書きができるようになったことで、妖精からのメッセージを読むことができたという展開について、「原作以上に良いラストシーン。翻訳が持つ新しい創造の力」と高く評価した。

      新宮市

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