文化審議会 文科大臣に答申
国の文化審議会は19日、新宮市丹鶴三丁目の国指定史跡「新宮城跡附水野家墓所」について、指定範囲の拡大を文部科学大臣に答申した。新たに指定を受けるのは、既指定範囲の西側(丹鶴ホール側)の2822.42平方メートルの部分。平成9年度に実施された発掘調査では、大手の登城路と考えられる遺構が見つかっているという。
新宮城は、関ヶ原の戦いの後に浅野氏が築城し、近世には和歌山藩主徳川家の付家老(つけがろう)で、大名に旬日待遇を得た水野家歴代の城跡。熊野川南岸の丹鶴山に立地し、山上に本丸、出丸、鐘ノ丸(かねのまる)、松ノ丸、平地に二ノ丸を配置し、西側山麓を大手(正面入り口)としている。
熊野川に面した水ノ手廓(くるわ)の発掘調査で確認された炭納屋群は、新宮炭の専売をしていた水野家が、本来軍事的性格を有する場所であった水ノ手廓を江戸時代の安定期に経済的性格の施設に役立てたものとみられ、近世大名家の経済基盤を考える上で重要な発見と評価された。これを受けて平成15(2003)年8月27日に、本丸など山上の各水ノ手廓と水野家墓所(橋本)の合わせて3万4290.92平方メートルが国史跡に指定されている。今回の追加指定で面積は3万7113.34平方メートルになる。
今回、追加指定されるのは、城跡西側の大手にあたる。石垣も良好に残っていて「紀州新宮城絵図」などに描かれている区画を現在も確認することができる。市教育委員会文化振興課は「既指定地と合わせて一体的に保存していく必要があると考えられる」としている。
上田勝之市長は、追加指定の答申が出されたことについて「心からうれしく感じております。指定にあたり地域住民の皆さま、市民の皆さまには多大なるご理解とご協力をいただきました。心からお礼申し上げます」と感謝を示した上で、「新宮城跡は熊野地方の歴史と文化を象徴する貴重な文化財であり、今回、城の顔ともいえる大手部分の追加指定により、その価値が一層高まりました。貴重な文化財を守り、未来へとつなぐという責任の重さをしっかりと受け止め、保全に全力を尽くしてまいります。また、市民はもとより多くの皆さまに新宮城跡の魅力を享受していただけるように活用してまいりますので、今後も皆さまのご支援をお願い申し上げます」とコメントを発表した。
