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フィリピン人材を採用 那智勝浦町立温泉病院 「夢の国」で資格取得へ

 那智勝浦町天満の町立温泉病院は10日、フィリピン出身の特定技能人材4人を採用した。同院での受け入れは初めて。アマルガ・キムさん(26)、ビグラン=アワ・ロッリさん(26)、オトム・チャーリンさん(23)、ヴィラエスター・マリーさん(22)は5年間、看護補助者として勤務しつつ、介護福祉士国家試験の合格を目指す。中紀文院長は、式典で「楽しみにしていた。快適に仕事ができるよう心掛ける」と英語で語りかけた。

 病院管理者の堀順一郎町長が辞令を交付した後、早速研修に入った。ヒト型の医療訓練用シミュレーター「Physiko(フィジコ)」を使い、4人で患者をストレッチャーからベッドに移動させる訓練を受けた。「ち・か・ら・が・つ・よ・い」「ゆ・っ・く・り・は・こ・ん・で」。指導係の看護師はできる限り遅いテンポで話すよう徹底したが、キムさんは「どのように運べば良いのですか」と、日本語ネイティブ並みの明確なアクセントで質問した。
 
 全員が(株)ONODERA USER RUNが運営する特定技能向け教育機関「OUR BLOOMING ACADEMY(アワー・ブルーミング・アカデミー)」出身。アカデミーは2018(平成30)年から次々と開校し、フィリピンを含めアジア5か国6か所に展開する。授業ではあいうえおの学習から始め、日常会話、業務の指示で頻出する表現と段階的に難易度を上げる。日本での就労経験があり、専門的なスキルがある講師が教えるうえ、生徒は高い意欲があるため、わずか半年間のカリキュラムで日本語能力試験N4(日常生活や職場で会話できるレベル)程度に達する。授業料は無料のため、経済的な理由でチャンスがなかった人にも門戸が開かれた。昨年12月までに9683人の学生が門をたたき、8592人が特定技能評価試験への合格を果たした。
 
 フィリピンの看護師の平均月収は2万5000~4万ペソ程度。日本円に換算すると6万6588~10万6540円で、物価の違いもあり国内で生活する分には問題ないが、多くが給与水準の高い日本での就労を目指す。
 
 チャーリンさんは海外で働くことを夢見て、2歳の娘を本国に残す覚悟を決めた。「働く機会をいただき、ありがとうございます。全力を尽くします。これからお世話になります」と敬語も完璧にマスターしてきた。好物はラーメン・ギョウザセットという親日家だ。
 
 最年少のマリーさんは、日本を「夢の国」と形容し、移住に挑戦する。「まだ上手じゃない」と謙遜(けんそん)する日本語は言い間違いが非常に少なく、適切に言葉を選べる天性の才能がある。「ここに来られてとてもうれしい。温かく迎えてくれて感謝する」と丁寧に頭を下げた。
 
 病院側も、文化庁がガイドラインを作成する「やさしい日本語」を練習して受け入れに臨んだ。文節を短くし、日本語の特徴でもあるあいまいな表現を使わないなど、ポイントを踏まえた意識を共有している。食事の提供先を書いたボードにはひらがなを表記した。岩本千帆看護部長は「仕事を覚えるのが早い。何より笑顔がすてき。病院の雰囲気が良くなるはず」と打ち解けた様子だ。言語の壁は互いの努力で乗り越えた。
 
 昨年の介護福祉士試験の合格率は約8割だが、外国人も日本人とほぼ同じ条件で受験する必要がある。外国人に限れば3~4割程度に減少する狭き門だ。福祉に関する法制度についての問題のほか、介護施設の利用者と接する際の心構えなど、座学だけでは学べないような分野も幅広く出題される。合格すれば、在留資格を「特定技能」から「介護」に変更でき、更新数の上限なく日本で働けるようになる。
 
 4人は資格を必要とせず、看護師を助ける現在の役割で先輩の薫陶(くんとう)を受け、空いた時間は勉強に回す、厳しく、忙しくも充実した日々を送る。ロッリさんは入国後、生まれて初めて雪を見た。「景色も、人の心も美しい。チャンスを与えられて『ありがとうございます』と言いたい」。雪化粧に希望を託し、アジアの最果てで一回り成長する。
 

      那智勝浦町

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