現建物の構造生かす
尾鷲市議会は21日、行政常任委員会を開き、市体育文化会館・中央公民館の耐震・長寿命化工事実施設計業務の公募型プロポーザルの結果について、市教育委員会生涯学習課および、採択された提案事業者の田中隆吉プロジェクトマネジャーから説明を受けた。
応募したのは2事業者で、書類審査とプレゼンテーション(発表)、聞き取り調査の結果、いずれも東京都に拠点のある事業者で構成する東原建築デザイン・金箱構造・スターバロッツ特定建築設計共同企業体が選ばれた。契約金額は税込み2954万9300円。
説明によると、体育文化会館は建物全体として耐震性能がおおむね確保されているとの判断で、元の設計を生かし必要最小限の補強で耐震を確保する、文化財保護と同様の観点での補強計画という。中央公民館は最小限の柱補強により耐震性を確保する内容。「別館から必要諸室を移転することにより、コンパクトに機能集約、複合化が図られた計画であり、スケジュール管理やコスト管理の提案による業務実施計画など、全体的に優れている」と評価された。
体育文化会館の耐震については、耐震診断の報告書を基に設計。屋根、二階床の外周部の鉄筋コンクリート造の部分や梁の補強、屋根のコンクリートの張り出し部分の下部を炭素繊維で補強を行うとした。また、表面が見えている鉄筋は、サビを撤去して防サビ塗装を行いモルタルで補強する。コンクリートのひび割れは、入念に調査をしてエポキシ樹脂を注入するという。
田中利保教育長は、一日でも早く使用を再開したいとの思いを語り、全国各地で災害が相次いでいることから「避難所としての役割がなお一層大きくなっている」との認識を示した。また、中央公民館については「より安全・安心な公民館活動ができるようになる。図書館は、蔵書数も含めて機能の充実を図りたい」と述べた。教育委員会が入っている別館の機能移転に関しては、特にあおさぎ教室に言及し「子どもたちも安心になる。不登校児童が増えてくる可能性がある。よりよい整備ができるよう努めたい」と語った。
空調など、避難所としての機能向上が求められていることについては「避難してきた人に安心して居てもらうためにも、何らかの施設整備は必要」との認識を示した。
今回示されたのは、耐震に関する部分のみで、施設の統合や環境への配慮などプロポーザルで求められたほかの要素も公表すべきという意見があり、下村新吾副市長は「われわれの希望と提案が異なる部分もあった。協議を重ねて設計をおこなっていく。固まったら示したい」などと理解を求めた。
「建物全体としての耐震性は概ね確保されている」ことについて、田中プロジェクトマネジャーは「建物を3分割して(耐震性を)判断したから、中央部分の耐震性が不足しているという結果になった」と説明。建設課の上村元樹参事は、体育文化会館の構造は、コンクリートの塊と説明し「全体としてみればIS値が0.59となっている。求める0.6に対して不足はわずか」と述べた。
内部構造では吊り天井は撤去する計画。重い部分が取されるので、耐震補強にとっては利点になるという。