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社説「生活圏の実態に合わせた連携」

 熊野川を挟んで向かい合う新宮市と紀宝町。日常生活の多くを共有する一帯の生活圏だ。買い物や通院も県境を越えて行き来するのが当たり前だが、住民には「他県に行く」という感覚はない。しかし、行政サービスは県ごとに制度が異なり、生活圏の実態と一致しない場面がある。この“ずれ”を解消するためには、自治体だけでなく、和歌山、三重の両県や県議会の積極的な関与が欠かせない。

 三重県は先日、食費等の物価高が長期化し、家計への影響を強く受けている低所得のひとり親世帯を支援する観点から、県内の対象世帯(約1万1500世帯)に対し、児童1人につき2万円のデジタル商品券を交付する事業の実施を発表した。対象は限定的だが、“今”を支援する施策として評価できる。一方の和歌山県は緊急的な子育て支援のような施策は見当たらない。未来への投資は大切なことだが、疲弊した住民が増えれば人口減少に拍車がかかることにつながりかねない。合併した2005年には8万2499だった田辺市の人口は5月末現在で6万5384人にまで減少、新宮市も先日の国勢調査の結果によると、2万5000人を下回った。この状況を県にも危機と捉えてほしい。
 
 救急医療、教育、公共交通など生活に密着した部分で、県がもっと主導した対応ができないものか。教育面では越境通学に課題がある。紀宝町の一部地域では、新宮市内の学校の方が近いが、基本的には県が異なるため難しい。公共交通に関しては、紀宝町の高齢者が新宮市の病院に通うためにバスを利用することは多いが、県境で路線が分断されるため、乗り換えが必要になり、運行本数が限られているため不便を強いられている。直行便や、高齢者の移動支援策としてデマンド型交通の導入など、さまざまな可能性を検討できないか。
 
 人口減少が進み、各自治体が単独で行うことに大きな負担となっている行政サービスもあり、広域連携の必要性は以前に増して指摘されている。両県ともに県内の圏域単位(新宮東牟婁や東紀州)での連携は模索しているが、県境を越えた連携は一部に過ぎず、もっとできる部分があるのではないか。市町村議会に比べ、住民との距離感が近いようで遠いのが県議会。特に当地域は互いに県庁所在地から最も離れており、県政の動きや県議の活動が見えにくい。同じ生活圏であまりに生活水準がかけ離れることのないよう、県境ならではの悩みに対して、もっと住民の声を聞き、県に強く働きかけるなど、県議にはしっかりと汗をかいてもらいたい。
 

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