人口減少が進む当地方にとって、地域経済を循環させるためには、"外貨"を獲得できる観光産業の発展が必要不可欠。どの自治体も力を入れて誘客に取り組んでいるが、広域的な観光振興の推進と地域の魅力向上を目的に、今月下旬には新宮市、那智勝浦町、太地町、北山村の各観光関係団体による連携協定締結式が予定されている。互いの強みと弱みを知り、相互補完の関係を構築すれば、地域全体の発展や経済循環が期待できるのではないか。
那智勝浦町はマグロ、太地町はクジラ、北山村はジャバラというように、代表的な特産物が代名詞となり、これらを目的に訪れる観光客は多い。この点で見ると、新宮市の代名詞は何か。考えなければ出てこないようでは弱いと言わざるを得ない。
新宮市は山と海と歴史が交わる稀有な土地。昨今の観光ニーズは、インバウンドの増加も受けて、体験や学びを踏まえたものが一層求められる。近隣にあって新宮市にないものとして、観光と第一次産業の連携が挙げられる。国勢調査に基づく2020年のデータによると、新宮市の第一次産業従事者は、就業者全体の2・1%にとどまり、高齢化も進んでいることから、今後さらに減少すると見込まれる。第一次産業の衰退は暮らしに直結する問題で、楽観視できず、育成を考えなければならないが、特に若い世代に向けては、広い視野をもって観光と連携した振興策を検討できないものか。
観光資源を生かしながら、第一次産業の後継者育成を進める。これを一つのテーマに考えてほしい。上田勝之市長は、新宮城址を整備して観光に活用しようと意欲を見せている。城址の一部(二ノ丸)にある正明保育園が今年3月末で閉園した。跡地利用は現在のところ未定だが、例えば、新宮市が所有者から土地を借り上げるなど、歴史ある園舎をそのまま使えるなら、市の魅力をふんだんに集めて食と情報の発信拠点としてはどうか。収穫したばかりの農水産物が並ぶ朝市や、それを使った料理を提供する飲食コーナーも設ける。熊野速玉大社と新宮城址を結ぶこの場所を中継点にすれば、まちなか観光にもつなげやすい。
協定を結んでまで広域連携を進めるのは期待感のもてることだが、新宮市はこれまで以上に特徴を明確に示さないと、周辺地域のアシスト役が定位置になってしまう。新宮市に光を照らすため、新たなことに挑戦する良い機会ではないだろうか。
