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多国籍の生徒が学習 新翔くろしお中、開校1か月

 夜間中学の和歌山県立新翔くろしお中が開校し、1か月が経った。さまざまな国籍の生徒13人(18日時点)が、机を並べて和気あいあいと学習している。新宮市内初の夜間中学とあり、教育の進ちょくが注目されているが、希望に応じて難易度別のコースを選べるなど、生徒主体の運営方針で軌道に乗り始めた。教室には決まって最前列に座る「48歳の中1生」がいる。
 
 
■小学生レベルから学習

 「月が見えてくる時間です。何の漢字でしょう」。午後6時過ぎ。隣接する新翔高校の生徒が帰宅し終えた時間帯に、校舎の明かりが灯った。1時間目は国語だ。担当教諭は黒板に大きく「夕」と書いた。教諭の目の前にいるのは、スリランカ出身のタヌージャ・ラックマール・マピティラマさん。教員も同級生も縮めて「ラッキーさん」と呼ぶ。ラッキーさんは「ゆう」と即答した。ノートがほぼ黒一色になるまで予習してきていた。

 同校の入学条件は、義務教育段階の学び直しを希望する県内の15歳以上。もちろん国籍は問わない。中学レベルの国語・社会・数学に実技科目など、1日4時間週5日のカリキュラムを組む。ラッキーさんは独自の「ベーシックコース」に所属し、日本語の基礎的な学習を希望する生徒に向けた課程で勉強する。

 国語では、漢字の成り立ちや使い方など“基本の基本”から教わる。「白」の学習では、「白白白白白」と必ず5回ノートに書き写して覚える。ラッキーさんは黒板から真剣な目を離すことなく教えを授かっている。「みんな仲が良く、勉強も楽しい。常に学校が楽しみで、休む予定でもやっぱり行こうかな、とさえ思う」。40分間の授業1コマが終わると、本来の穏やかな目に戻った。1教科あたり2人の教員がつく手厚い体制が、ラッキーさんをはじめとする生徒の著しい成長を支えている。
 

■愛する日本に住むために
 
 27年前、約6593キロ離れた島国にやって来た。言葉はほぼ独学で覚え、日本人でも難しいフォークリフトの資格を取得するなど、人も文化も愛した日本で仕事を続けるために努力を惜しまなかった。日本人女性と良縁に恵まれ、結婚10年を超える。

 大阪府河内長野市で営業していたスリランカカレー専門店を、自身が誘って来日した弟に任せ、串本町潮岬に移住。現在はバナナなどを自身の農園で育て、生計を立てている。

 休み時間は「階段からすべっちゃって足が痛いんだよ。畑仕事ができない。明日の朝、病院に行こうかな」などと雑談を交わす。声だけを聴くと日本人と間違えられるほどだ。妻の厳しいレッスンのおかげで完璧な発音をマスターしたが、ラッキーさんは満足していなかった。「ビジネスメールや読み書き、細かいニュアンスを伝える時に不安がある。教えてもらえるならとチャレンジすることにした」。
 

■校長「柔軟な学びを」
 
 文部科学省は基本的に3年間の学習を想定しているが、県教育委員会内の準備室長から着任した金澤亮校長は「今後決める部分も多い。習熟度はそれぞれ違うので、昼間の中学のように3年経ったから卒業、という単純な話ではない」と広い視点で構える。生徒の年齢は20代から80代まで。教員が年下の場合もある。「戦後の混乱期に中学生の年齢を迎え、まともに教育を受けられなかった人たちもいる。たとえ中学に行っていなくても入学できるようにした」。ラッキーさんは本国で義務教育課程を終えたが、正式に日本語教育を受けたことはなかった。「もっと基礎から学びたいとの本人の言葉通り、真面目に勉強を続けている」とは金澤校長の評。期待の生徒は「いえ先生、まだまだです。もっと勉強しますよ」と応じた。日本人らしいやり取りも、この1か月で早くもお手の物だ。

 文科省によると、昨年4月時点で全国に62校の夜間中学があり、その数は2020(令和2)年度から33校、40校、53校と右肩上がりに増加している。金澤校長は「ここも地域に愛される学校になれば。さまざまな人が学んでいると伝えたい」。県内では他にあけぼの中(和歌山市)という夜間中学があり、開校にあたって参考にした部分も多いが、今後、生徒のニーズに応じてオリジナリティを出していく構えだ。

 
■「努力の天才」の夢

 孤独もよく知るラッキーさんには夢がある。「学校に不安があって行けない子どもたちのために、動物と触れ合いながら学べる場所を作りたい。自然豊かな東牟婁に来たのはそのため。あとは日本語がもっと上手にならないと。もっと、もっと」。

 努力の天才は、愛用のノートに「天国」と繰り返し書いていた。自習か現在地の表現かは、本人のみが知る。

◇       ◇       ◇

 同校は年度途中でも入学を受け付ける。問い合わせは、県教育委員会義務教育課(電話073-441-3709)。 

      5月19日の記事

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