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「おもろい」地域医療学ぶ 三重大医学部生 東紀州3市町で実習

 国立三重大学の医学部1年生が、東紀州の3市町で「地域実習」に取り組んでいる。大病院の手術室に入り、研修医として実地で学ぶ従来の実習とは異なり、診療所や障がい者事業所等で医療を必要とする地元の人々と触れ合うことで、“人を診る”ことを学ぶ。同地域の医療、介護、教育など幅広い分野の機関でつくるNPO法人ふらっとが2024年5月の設立時から受け入れを支援している事業で、今回は7人の医師の卵が志願した。
 
 このうち紀宝町井田のくまのなる在宅診療所は25日、伊藤あいさん(19)を受け入れた。伊藤さんは、一日あたり10世帯程度を訪問し、健康のことだけでなく生活、経済、人間関係などさまざまな悩みを聞く濱口政也院長(44)の薫陶(くんとう)を受けた。工業地帯の一角を占める四日市市出身で、「環境が地域によって全く違う。人の少ない紀南に来ることは初めてだった。住民は生活保護を受けていたり、家族が近くにいなかったりさまざまな事情を抱えていることを知った。何より、医療資源が足りていない場所が多くある」と気付きを得た。

 同診療所は通院が困難であったり、末期がんで緩和ケアを必要としていたりと病状が悪い患者を多く診る。濱口院長は診療だけでなく、あえてカンファレンス(会議)に伊藤さんを同席させることで、薬の兼ね合いや家族とのやり取りなど、実情をそのまま伝えた。会議では積極的に話を振り、否定せず、考えを尊重し続けた。

 実習が本格的に始まる5年生までは座学が中心となる。伊藤さんは「医師になる姿が、実感できた気がする。今までにはなかった」と芽生えた覚悟を語った。同プログラムは課外活動に位置付けられ成績に影響しないが、伊藤さんは意に介さない。特別講義で三重大を訪れた濱口院長を追いかけてきたからだ。

 院長は学生時代、放射線技師を養成する大学に通っていたが、祖父の入院に付き添った家族が漏らした「気持ちを医師に伝えることが難しい」という言葉が忘れられず、卒業後、高知大学医学部に2浪の末再入学。20年7月に開いた同診療所の周辺と同じく、海と緑が間近にある環境で実習漬けの日々を送った。全ての患者の名前と性格、好物、交友関係まで把握し、医師と患者という立場を超えて友人のような関係をつくる地域医療を知った。講義でその魅力を伝え、一人の有望な若者に同じ志を持たせた。

 「やっぱり地域医療は『おもろい』。これが自分のしたい事だったから。思いを伝えられれば」と院長。医療は大病院だけではない—。同法人の理事として、紀南地域に学びの場ができたことにやりがいを感じている。

■5日間 別の場所で

 実習は一人あたり5日間の日程で、同じ実習場所に行くことは基本的にない。同診療所をはじめとするふらっとの協力機関のほか、趣旨に賛同した障がい者事業所、サロンなどに学生が入れ替わりで出向く。各科をまわり、病院内で完結する従来の実習とは一風変わった運営方針だ。受け入れは無償だという。

 まだ基礎的な医学知識を学習している段階の1年生を受け入れることで、白衣を着た後のビジョンを描きやすくするねらいがある。濱口院長は「将来、紀南医療圏を『手伝おうか』と言ってもらえれば。自分はトップクラスに若手といっても、40代だ」。学生たちが“仲間入り”する日を待ち望んでいる。

 伊藤さんとの短いながらも充実した一日が終わり、院長は自身に言い聞かせるようにつぶやいた。「どんなにお金持ちでも、偉い人でも、老いは来る。考えさせられるよ」。地域医療に課題は山積している。愛弟子との再会が、改めて教えてくれた。

      2月26日の記事

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