日本の空き家問題が深刻だ。令和7年公表の「住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新した。人口減少や高齢化、相続問題など複合的な要因が考えられるが、今後も空き家率の上昇が予想されている。
今月18日に大分県佐賀関で発生した大規模火災では、焼損した約170棟のうち、約4割にあたる70棟前後が空き家だった可能性があるという。火災が拡大した一つの要因と考えられている。
管理されない空き家はどんどん劣化し、地域社会にさまざまな影響を及ぼす。防災面では、今回のような火災被害のほか、大規模地震発生時には建物が倒壊して避難路を防いでしまうことも予想される。雑草などが生い茂って周囲の死角となり、誰が出入りしても分からないなど防犯上の問題、さらにごみの不法投棄といった衛生面、景観悪化など周囲の住環境への悪影響もある。
空き家問題に対して、国は空き家の適切な管理・活用を地域経済の活性化や住環境維持の観点からも重視している。紀宝町は今年5月、専門的分野の委員で構成する「空家等対策協議会」を設立した。鵜殿・成川・神内地区で令和3年に実施した調査では、40棟が空き家と判断され、居住段階から空き家にならないように意識付けし発生を抑制するとともに、適正管理や利活用、管理不全空き家解消を促進。移住者らに売買・賃貸を行う空き家バンク事業、解体費用の一部助成、空き家の購入費用や購入後の改修工事の費用一部助成、移住促進のリノベーション支援事業、相談窓口の設置などを行っている。
新宮市でも補助金制度や相談窓口を設けているが、上田勝之市長は取り組み加速には、各課に分かれる業務を集約して専従的に行えるよう環境を整えることも必要との見解を示す。
田辺市は昨年から、民間との連携を強化。所有者からの相談受けてまずは市が状況を把握したうえで、登録事業者に情報を提供。情報を共有した事業者がそれぞれの立場から活用方法を提案し、所有者と方向性が一致した場合、契約するという流れだ。
各自治体は現在の取り組みの周知を一層図ると共に、新たに有効的な施策がないかどうかの検討を進めてもらいたい。
