自殺した元兵庫県議への名誉毀損の容疑で、N国党の立花党首が逮捕された。情報を扱う仕事の端くれとして、考えさせられることは多い。
この件は兵庫県知事のパワハラ疑惑に始まり、百条委員会などの結論を待たずしての不信任決議、出直し知事選のいわゆる2馬力選挙、当選後に出てきた買収容疑と、事象と批評が錯綜し、真実性や善悪が判断しづらい。自殺者も出て、今も事件が尾を引き、兵庫県民を含めて誰もが幸福になっていない。
芥川龍之介の短編小説に「藪の中」がある。目撃者や当事者の言い分が食い違い、結局真実は〝藪の中〟という話だが、これに昨今のSNSの爆発的な拡散性が加わるとどうなるか、というような事象が続く。政治のみならず、芸能界に関わる性加害なども、何が事実か把握できないまま、それでも社会は回り続ける。
虚偽による誹謗中傷は論外だが、思い込みに基づく批判が誹謗中傷になり、罪のない人を傷つけてしまうことはあり得る。批判と非難の境目は、それこそ〝藪の中〟なのかもしれない。
(R)
