東牟婁2か所で上演
新宮市など当地方を中心に活動する劇団「ワカイミソラ」は11月3日(月・祝)午後1時15分から、古座川町立古座中学校の文化祭で、語り劇「よだかの星」(原作・宮沢賢治)を上演する。約1時間の作品で、保護者以外の一般観客の入場も可能。
同劇団は1987年結成。これまでに、新宮城跡、熊野速玉大社、旧西村家住宅(西村伊作記念館)、田並劇場(串本町)など、野外を含めたさまざまな場所で19回の公演を行ってきた。今回は古座中からオファーがあり、「子どもたちにぜひ見てもらいたい題材」と、宮沢賢治の作品に初挑戦する。
物語の主人公のよだかは、醜い姿ゆえに鳥の仲間から嫌われ、鳥のボスであるタカからは「タカの名前を使うな」と改名を強要される。同時に、自分もまた生きるために「たくさんの虫の命を奪っている」ことに絶望したよだかは、空のかなたの世界に行ってしまおうと決意。夜空を飛んで星に願いを叶えてもらおうとするが、相手にされない。しかし命をかけて飛び続けたよだかは、いつしか青白く燃える「よだかの星」となり、今でも夜空で燃える存在となる。
100年以上前に書かれたこの物語は、高校の国語教科書にも取り上げられる普遍的なテーマを持った作品。今回の上演では、作者が作品に込めた「力の強いものや数の多いものがマイノリティ(少数派)をいじめる世界からの脱却」、「自分らしく生きることへの希求」というメッセージを若い世代により分かりやすく、実感的・体感的に伝えたいというねらいから、原作の言葉を生かした語り劇のスタイルで表現する。また、テーマの共通性から、同じく宮澤賢治作の「やまなし」の一部を取り込んだ構成となっている。
弱いものいじめなどを描く、厳しくシリアスな場面もある一方で、コミカルで笑えるシーンもあり、全体として楽しみながら「生きるとは何か」を考えさせる作品となっている。
■賢治の思い芝居で
脚本・演出を担当する谷口克朗さんは、新宮高校と串本古座高校で長年演劇部の顧問を務め、全国大会や近畿大会にたびたび出場を果たすなど、熱心に指導してきた。退職後は活動の場を地域に広げ、ワカイミソラでの演劇上演とともに、串本町西向地区で「おはなしの広場」と題して毎月1回、絵本・紙芝居の語り聞かせ活動を行っている。
今回の劇では、羽山真弓さん、谷口美加さん、谷口克朗さんの3人が出演する。6月末から月に4~5回の稽古を重ね、本番が近づいた現在は最終仕上げの段階。22日は新宮市での最後の稽古となり、同市丹鶴のチャップマン邸で、衣装を着用してシーンごとに流れや間合いなどを確認していた。
谷口さんは「みんながともに幸せに生きるにはどうしたらいいのか。生き物のさだめの中で、いじめや戦争がなくなる世界を目指したいという賢治の願いや思いを、芝居を通して届けたい」と多くの来場を呼び掛けている。
なお、同作品は、私設図書館「かんりん文庫」(串本町)と共催で11月9日(日)午後1時30分から、同町潮岬の潮岬公民館でも上演する。入場無料で予約不要。小学4年生以上が対象。問い合わせは、谷口さん(電話090-9095-4476)、同文庫(電話090-9256-7895、梅崎さん)。
