「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年記念事業として、和歌山大学観光学部と京都産業大学経営学部の大学生が立案した「熊野三山まちあるきスタンプラリー」の成果や今後の展望についての報告会が3日、新宮市の県東牟婁振興局であった。学生からオンラインで報告を受け、同協会の役員らが質問するなど意見交換した。
2021年度(令和3年度)に熊野三山観光者調査を実施すると、若者層(18~34歳)は全体の3.7%しか訪れていなかったことを受け、若者層受けする観光資源を知ってもらうきっかけに、この3.7%の人が興味を持つ事業を企画し、他の若者層にも興味を広げてもらおうと、大学生の参画による事業を計画。観光資源の情報が手に入る手段として、デジタルスタンプラリーとパンフレットを作成した。
デジタルスタンプラリーは、熊野三山やその周辺の飲食店や観光施設計36スポットを巡るもの。スタンプを獲得し条件を満たした人には、オリジナル木札ストラップや紀州材カレンダースタンド、熊野三山エリア特産品をプレゼントした。まちあるきマップは、学生のコメントやイラストを交えて、デジタルスタンプラリーの対象スポットを紹介したパンフレットで、熊野三山エリア(新宮市・那智勝浦町・田辺市本宮町)の観光協会やJR駅、道の駅、宿泊施設などで配布した。
報告によると、スタンプラリーの参加者人数は611人で、目標には届かなかったが、参加者のうち41%が2市町以上訪問する結果となった。若者層は3.7%を上回ったが、あくまで参加者アンケートの結果であり、回答者数が令和3年度の調査に比べて少ないため結果については一考の余地があるとした。
SNS活動について、熊野エリア観光推進実行委員会のインスタグラムに短編動画を6つ投稿。そのうち2つの動画に3万円ずつ広告費をかけ、大阪、名古屋在住で観光や旅行に興味がある18~30歳の人に絞ってPRした。また、「熊野三山エリアを盛り上げたい大学生」というTikTokアカウントを作成し動画を4つ投稿した。
結果は7万5190人の若者層にリーチすることができたため、アプローチ自体はうまくいった。しかし、TikTokの直接的な成果は感じられず、原因としてはインスタグラムと比べて開始時のフォロワー数に差があり、説明欄の文章が長く広告らしさがあったため、おすすめ投稿として表示されても見てもらえなかった可能性があると推察した。
今後は、引き続きインスタグラムやTikTokへの発信に力を入れ、食、自然、歴史という枠組みにとらわれず、御朱印や体験などの点でのアピールを行っていくとした。
同観光協会の鳥羽真司副会長(東牟婁振興局長)は「とても内容の濃い報告だった。こういった活動をしていく中で改めてこの地域の魅力をより多くの方に知ってもらえる機会になったと思う」と伝えた。