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紀南抄「熱源をたどる」

 本音というものの取り扱いについて、この数年考えている。取材で聞く人々の言葉には、建前的に語っているものも多いと日々感じてきたからだ。
 
 こちらがコメントを求めれば、新聞に載っても恥ずかしくないような内容で答えてくれたりする。そのために、時には最初言いかけたことを変更する人もいる。本音と建前という考えがあるが、こういう時にはそれを特に意識する。
 
 しかし考えてみれば、本音などはなからないのかもしれない。自分では本心を語ったつもりでも、実は後から考えてみれば「言い過ぎたな」とか、「もっと違う伝え方があったのにな」とか、ぐだぐだと考えるものだ。ならば、本人が本音だと思っている言葉と、あえて体裁よく放った言葉には、どれほど違いがあるのか。
 
 やはり最後は感覚に頼ることになるのだろうと思う。つまり、信じるべきは熱量である。嘘の多い言葉には、どこか他人事のような雰囲気が漂う。しかし人の芯から出た言葉には、不思議な力がある。それを推し量れるのは熱量。そしてその熱量を推し量れるのは、聞き手の感覚だけである。
 
 熱源をたどる。
 
【稜】

      1月20日の記事

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