権力は案外、微妙な空気感の中で、非常に分かりにくく作用する。
取材では寄り添いが大事だが、間違えると馴れ合いになりかねない。気を抜くと自分の甘えにより、相手の甘えを見過ごしているケースがある。
先日はある総会系の取材で、事務局の自治体職員に資料提供を断られた。その場でメモはしていたので自分も引いたが、資料があれば確実な上、校正でもチェックできる。報道に公開している会議なので資料提供を断る理由もそう強くない。予想でしかないが職員は上司に伺いを立てる手間もあるし、他の報道にも渡していないから渡さないのが無難と判断したのだろう。
これも一種の権力性である。無論、それ以上追及していない自分の甘えが引き起こしたことだが、もし相手が首長や幹部職員ならより追及しづらかっただろう。もし自分が一般住民なら、疑問すら抱かなかった。権力は振りかざすというよりも、こういった空気感の中でこそ、ともすれば行使している側も自覚がないままにうごめいているものなのかもしれない。そしてそれは、私含め誰もが例に漏れず行使しているはずではないか。
【稜】