企画展「熊野市域の庚申塔と庚申信仰」が熊野市井戸町の同市文化交流センターで行われている。庚申信仰や同市内にある138のほこらや石像をパネルで紹介するとともに、現在も風習が残る西波田須や紀和町矢ノ川で受け継がれている掛け軸や供え物を紹介している。
同市文化財専門委員の向井弘晏さんが平成26年に出版した書籍からの紹介。庚申信仰の概要や、位置図、飛鳥町神山の初庚申のレポートと、それぞれの庚申像の大きさや形などを記したA2判パネルを展示している。
庚申は、中国の道教の三尸(さんし)をもとにさまざまな信仰や習俗などが合わさり発展した民間信仰。平安時代に日本に伝わったといわれる。「人間の体内にひそみ、60日に一度ある庚申の日の夜、眠っている間に抜け出して天帝の元にのぼり、その人の素行や過ちを告げて命を縮める」との言い伝えがあり、三尸が抜け出さないように庚申の日に夜ごもりする庚申講という集まりがあった。また、像に縄を巻いて祈れば失せ物が出てくるともいわれる。庚申講はほぼなくなっているが、像に縄やひもを巻いてなくしたものを探す風習はまだみられる。
向井さんは「若い人は庚申のことをしらない。今記録に残しておかないと忘れられてしまうと考えたのがきっかけ」と話し、「1年くらいかけて市内全域を調査した。集落のはずれにあるものだが、すでに廃れていて地元の人でも場所が分からなかったりした」と振り返った。
西波田須では夜ごもりはしないものの11軒が当番を持ち回り、家に掛け軸をかけ、特別な団子を作って供えるなどしているという。
展示は14日(日)まで。時間は午前9時から午後7時。13日(土)午後2時から、交流ホールで向井さんのミニ講演会(ギャラリートーク)がある。