「呼吸」ー。動物、魚、虫、植物、海、山、川、マグマ、地球、宇宙などあらゆる流体が、静と動の波を繰り返し、呼吸という律動でつながっているように感じる。
地域交流センター「太田の郷」で、映画「杜人(もりびと)」の上映会があった。自然に寄り添う造園家・矢野智徳さんを2年半追ったドキュメンタリー。矢野さんはその土地の環境を見つめ直すとき、地面に空気と水の通り道を作ることで大地の呼吸を促し、草木の生きやすい環境を整える。地球は全体が一つとして循環しており、地球でいう「大気(風)と水脈」は、人でいう「呼吸と血管」という。
矢野さんいわく、土砂災害は大地の深呼吸であり、息を塞がれた自然の最後の抵抗。草木が根を張り、水が細かく抜けていく自然の環境を人が砂防えん堤やコンクリート工で塞いでしまうため、水は土の中で飽和し、グズグズになった土壌がある時一気に崩壊する。言われてみれば当然の理屈に思える。
吸って吐く「呼吸」は、自身の内側と外界をつなげ、大きな連動帯の一部として組み込んでいくこと。自分の呼吸に耳を澄ませれば、周りの呼吸にも気が付けるだろうか。
【稜】