尾鷲市向井の三重県立熊野古道センターで5日から特別展示室企画展「郷土の軌跡 尾鷲市の文化財展」が行われている。展示の目玉の尾鷲神社の獅子頭のほか、土器や古文書、梵鐘など16件57点の実物、文化財や天然記念物の写真解説パネルなど60点で、同市内の指定、登録文化財を網羅する展示となっている。
尾鷲神社の獅子頭は県内で一般公開するのは初めて。公開自体も昨年秋の和歌山県立博物館の紀伊山地の霊場と参詣道登録20周年に関するものに続き2回目。
この獅子頭は県の有形民俗文化財。総高33センチ、面長46センチの木彫で、製作年代は不明だが、大きく見開いた眼、彫りの深い眉やあごひげ、ほほひげの渦巻紋、乱ぐい歯は自由奔放で、室町時代末から桃山時代にかけての特色がみられる。通常みられる獅子頭と比べて鼻が長い。
ヤーヤ祭りの獅子出御の儀式ではレプリカが使われていて、展示されているものは、通常は見られない。今回も、文化財保護のための展示期間の制限があり20日(日)までの展示で、その後はレプリカを展示する。
このほか、縄文時代各期の土器が発見されている曽根遺跡出土品、幕末に異国船を見た場合に藩などに通報できるように配布されたロシア船やオランダ船の絵が描かれている「九鬼家異国船絵図」、鎌倉時代から室町時代ごろに作られたものとみられる安定寺や光明寺の大般若経の一部などを展示している。
生育環境の保全や採集されないようにするため場所が公開されていない「ジュロウカンアオイ」の自生地、国の天然記念物の須賀利大池および小池など、建造物、五輪塔などについてはパネルで紹介。一部は二次元コードを利用して動画や3D画像が見られるようにしている。祭りなど無形文化財は、映像で紹介している。
担当する同センターの嶋田仁志コーディネーターは「尾鷲神社の獅子頭は、今後しばらく見ることが無くなるかもしれない。この機会にぜひ目にやきつけていただきたい。早めのご来場を」と呼び掛け。また、「指定文化財が関連しているものもある。東紀州のことを調査し情報発信するのがセンターの役割。ふるさとの歴史をより知っていただくきっかけになれば」と話していた。
6月22日(日)までで会期中無休。無料で見ることができる。6月8日(日)午後1時30分から、同市教育委員会の脇田大輔学芸員による講演会が行われる。5月7日(水)から参加を受け付ける。
今後4年かけて、紀北町、熊野市、御浜町、紀宝町の文化財についても紹介する企画展を行うという。