農林水産省近畿農政局は、活力ある農村・漁村づくりに取り組んでいる個人、団体を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として表彰している。9回目となる今回は、近畿地方の7団体1個人が選ばれ、和歌山県内からは那智勝浦町の太田川流域農泊振興協議会が「ビジネス・イノベーション部門」で対象となった。町役場で24日、同協議会に選定証が授与された。
同協議会は、宿坊(宿泊機能のある寺)として運営している那智勝浦町下和田の大泰寺の西山十海住職が会長を務め、同寺を中心とした下和田地域の発展や特産品の販路拡大策について考える組織。大泰寺は2019年以降、素泊まりで1万~4万円と比較的安価な宿泊料に加え、禅宗の臨済宗妙心寺派に属する寺であることから、座禅を体験できるオプションが人気を博し、年間1000人以上が宿泊している。
近畿農政局は独創性を踏まえ、「もともと宿坊でない寺院を改装し、多くの旅行者等の訪問につなげ、雇用を生み出した。地域の生産者や飲食店をつなぎ、全体の所得向上とともに、地域の資源を生かし宿坊の魅力を高めるなど、地域活性化に寄与した」点を選定理由に挙げた。
認定式で、同局の中根繁・和歌山支局長は「地域全体の所得向上に向け、魅力を引き出す効果が発揮されている。地域性を体現した素晴らしい情熱に深く敬意を表する」とたたえた。
西山住職は「人口が減少していく中でこのままではいけないと思い、宿坊を始めた。寺は地域文化として重要で、見るべきものがたくさんある。自分の思いに共感してもらえれば」と述べた。今後は協議会として、魚介類や農産品などの特産物をインターネット経由で全国に届ける取り組みを進めるとした。
今回の県内からの被表彰は同協議会が唯一。新宮・東牟婁地方からは第1回(2014年)に那智勝浦町の色川地域振興推進委員会、第4回(2017年)に古座川町の古座川ジビエ振興協議会が認定されている。
