和歌山、三重、奈良の3県で死者・行方不明者88人を出した2011年9月の紀伊半島大水害から4日で14年が経過し、各地で追悼行事が行われた。時間の経過とともに記憶は薄れていくが、教訓を後世に伝えていかなければならない。
13回忌を終えて一つの区切りがついたとして昨年、那智谷大水害遺族会が解散した。今年は遺族有志らでこれまで同様、災害の発生時刻に合わせて犠牲者と同じ数の29個のキャンドルに火を灯(とも)して追悼した。元代表の岩渕三千生さんは、解散しても背負っているものは変わらず、今後も災害の教訓を伝える活動は個人で続けていくとし、これまで同様「忘れたらあかん、忘れさせたらあかん。自分の命は自分で守る行動を」と訴える。
毎年9月4日に大水害で殉職した消防団員を追悼する「消防安全誓いの日」を開いている新宮市消防本部では、消防職員として大水害を経験していない職員がほぼ半数の割合になった。竹田和之消防長は「経験した職員は知識と判断を次世代に伝える責任がある」と伝え、経験していない人には学びとるよう促した。
この紀伊半島大水害以降、気象状況は年々厳しさを増し、全国で豪雨災害が頻発するようになった。台風から離れていても豪雨になる場合がある。線状降水帯や大雨特別警報という言葉も聞きなれるほど、住民生活と自然災害の距離が年々縮まっており、国や自治体は防災意識の高揚や日頃の備えを繰り返し呼び掛けている。
当地方は地域柄、雨に慣れている人は多いが、昔の感覚でいると危険な場合もある。近年、台風の直撃や災害の発生が懸念されるほどの豪雨には見舞われていないが、これからの秋シーズンの台風は大型になりやすく、過去を見ても被害を広範囲にもたらすものが多い。また、台風本体とは離れた場所でも線状降水帯により考えられないほどの雨の降り方になることもある。
気象予報の技術の進歩により、ある程度性格な予報が数日前には分かるため、突然襲う地震とは違って事前行動はとりやすい。自治体がつくるハザードマップで浸水や土砂災害の危険地域をあらかじめ把握することもできる。油断することなく普段からの備えを大切にしてほしい。
