中高生の声を聴くとよく「地元には働く場所がない」という話題になる。痛いほどよく分かるし、自分も中高生のころはそう思っていた。中高生の親も「地域外で羽ばたいてほしい」と思っている人が多いのではないか。
三重労働局によると、昨年12月分の正社員の有効求人倍率は1.05倍。全国平均の1.11倍に比べ少ないものの働く場所自体はある。一方、働きたいと思える事業所がないというのが実際だろう。
多くの人がサラリーマンになり、家庭と職場の関係が遠くなったことが、子どもたちが「働く」ことに関心を持ちにくい要因の一つと思う。また、テレビなどを通じて、働く人といえは、いわゆる「都会のサラリーマン」というイメージが強いこともあるかもしれない。
元日号の特集で、尾鷲商工会議所の青年部の方に座談会をしてもらった。参加者から「子どもたちには(働くことの)情報が少ない」という指摘があった。子育て支援で「お仕事体験」の企画があるが、より充実を図ることで将来、地域に残り働く人を育てることになる。
もう一つは収入面。都市部の求人と地元の求人では、どうしても差がついてしまう。一方で、現金給与の多さは生活の豊かさに直結しない。
3年前のデータだが、国土交通省が「都道府県別の経済的豊かさ」という資料を公表した。2人以上の勤労者世帯の、世帯ごとの可処分所得から基礎支出を差し引いた金額は三重県が1位。通勤の機会費用を加味した場合、三重県は1位で東京は最下位となっている。極端な言い方をすれば、東京の月収30万円は、三重県の月収20万円より「使い出が悪い」ことになる。
都会で暮らせば支出も増える。通勤時間も長くなり、自由な時間が制限される。まもなく高校生は卒業の時期。一度都会に出るのはやむを得ないし、その方がいろいろな刺激になるが、将来、尾鷲市や紀北町に戻って仕事をし、〝豊かな暮らし〟をしてもらいたい。