「昨日のあの番組見た?」という言葉。自分が小学生の時は、映像メディアの主流はもっぱらテレビで、人気番組の放送があった翌朝はそれついて語り合った。今は、地上波のテレビは単に選択肢の1つ。ユーチューブなどの動画サイト、ネットフリックスなどの月額制見放題の「サブスク」、アベマTVという地上波とネットメディアの中間的立ち位置など、細分化されている。
興味深いのは、ネットメディアの「レコメンド(おすすめ)機能」だ。その人が過去に見た動画などから、好みに合った動画や作品を自動で表示してくれる。例えば釣りの動画をよく見ている人には、まだ見ていない釣りの動画をおすすめしてくる。動画のみならず広告表示などにも活用されており、これによってさらに個人の興味が深堀できる。ただ一方でこれによって、冒頭のような言葉はもう聞かれない。
ネットは、世界をつなげているようであって、現実の個々人を分断している側面も強い道具なのではないだろうか。便利に使う分には上等。だが温度や湿度のある生きた世界は、スマホから顔を上げたところに広がっている。
【稜】