先日、熊野川の河原で、地面にトンビとカラスが並んでいる姿を発見した。珍しい光景だなと思い見ていたら、どうやらトンビの食べている餌をカラスがつつこうとしているようだった。
遠巻きで、餌はよく見えない。大きめの魚にも見える。それにトンビが乗っかるようにして、時々つついては飲み込んで、と繰り返している。たまにしかありつけないご馳走なのだろう。心なしか、表情が浮かれているようにも見えてきた。
カラスはその横にいて、体をねじりながら少しかがんで、下からくちばしを突き出し、そおっと餌をついばもうとする。そろり、そろりとにじり寄って、もう少しだと思った矢先、トンビが大きく翼を広げ、数センチだけ飛び上がるようにして威嚇する。カラスはそれに応じて翼をひるがえらせ、斜め後方に10数センチほど飛び上がり距離を保つ。少し経つと、またそろりそろりとにじり寄って、威嚇されてを繰り返す。
最後はトンビもお腹いっぱいになってきたのか、カラスのささやかなついばみが許されていた。単なる食事。それが生死と直結する世界。今日も、膳に手を合わそう。
【稜】