漂着したマッコウクジラの写真を撮りに、島勝浦の船越海岸を歩いていると、やけにこんもりとした塊があるのが遠目からでも確認できた。クジラが大きいのは当たり前だが、目の当たりすると生物として規格外の大きさだと実感する。より近くで写真を撮ろうとしてつるりと滑り、付近の岩に白い脂が飛び散ってこびりついていることに気付いた。
島勝浦は江戸時代鯨漁が盛んだったと聞いており、白浦には母子鯨の伝説もある。あの膨大な肉と脂を見て、骨や皮、ヒゲ、歯に至るまで余すことなく利用できる。打ち上げられたクジラはかつては福音で、集落総出での解体作業の後で収穫を祝う宴でも開いているのかも知れない。
クジラは完全に打ち上げられており、船やクレーンが入り込むのは難しい。腐食が進む巨体ではロープでの牽引もできるかどうか。解体して運ぶにしても海岸からの距離と脂で滑る岩場では作業は難航しそう。頭を悩ませる種ではあるが、海とともに生きてきたまちの証左ともいえる。
(R)