当地方に移り住んで、18日で丸3年が経った。全てが新鮮だったあの時から比べると、生活の中でいろんな”当たり前”が身に染みてきた。記者として、移住者として、また人として、いろいろな方々のご指導をいただきながら、少しずつやらせてもらっている。
今思うのは、斜に構えて誰かを批判したり文句を言ったりしながら停滞することはいつでも、誰でもできるということだ。人を下げるような言い方をして自分を守ったり、環境を言い訳にして本来できたはずのことすらやらなくなったり。そういう生き方を選択する人たちもいる。しかしそれは、楽を選んだつもりが長い目で見ると自分自身をむしばみ、精神的につらくなってくるように思う。本来持っている喜びや悲しみ、好き嫌いなど、子どものような純真をよみがえらせてくれるのもこの土地である。
熊野とは社会であり、歴史であり、自然であり、信仰であり、文化であり、日々であり、未来であり、私であり、あの人である。そしてそのいずれもが熊野そのものをピタリと言い表せるものではない。くぐもった眼をこする。
【稜】