台風7号は久々に紀伊半島を直撃するコースをたどった。進路がある程度定まると、接近前から、どれほどの被害が発生するのか、紀伊半島大水害(2011年9月)のような未曽有の災害にならないかと心配する声が聞かれた。今回は接近までの雨量がそれほど多くなかったため、大雨や洪水による被害は最小限にとどまったが、暴風による被害が各地で見られ、特に停電は広範囲で長時間に及んだ。
夏の暑い時期に長時間の停電は、住民の健康や生活に大きく影響した。エアコンや扇風機は使用できず、風雨で窓も開けられない状態。情報入手に欠かせないスマートフォンの充電にも苦労した。車の中で暑さや電池切れをしのいだ人も結構いたようだが、高齢者など車を持っていない家庭では今回のようなケースでどのように対応すべきなのか。課題が浮き彫りになったのではないか。
災害への備えに関しては、突然発生する地震に対し、ある程度の進路予想の立つ台風は事前準備がしやすい。今回のような停電、さらに断水などの被害を想定し、懐中電灯やスマートフォン充電用のモバイルバッテリーなどを準備したり、飲料水のほか生活用水用に風呂の湯船に満タンの水をためておいたりすることも大切。冷凍庫で保冷剤や飲み物を凍らしておけば熱中症対策にもなる。車についても、日頃からガソリンを満タン近くにしておけば長時間過ごすことになっても安心できる。
弊紙では台風接近時などに記事とあわせて防災の豆知識を掲載しているが、同じものを繰り返し掲載するだけでは読者への浸透は薄くなる。さらに、時代の変化により、新たに備えなければならないものもあるはず。今後は情報のアップデート(更新)を意識していく。
防災への意識は、台風襲来から時間が経過すれば忘れがちになる。各自治体には毎月発行する広報紙で繰り返し周知することが求められる。また、税金で発行する広報紙が本当に住民のための情報が掲載されているかどうかの検証も必要。デザインや紙質にこだわるのではなく、掲載する情報の中身を吟味し、必要に応じてアップデートしていくことが大切ではないか。各議会には住民目線で広報紙のチェックをお願いしたい。