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仕事あっても働き手なし 高い求人倍率に潜むミスマッチ

 「求人を出しても働き手が見つからない」─。尾鷲市や紀北町で、事業所の人手不足が深刻だ。少子高齢化と人口減で仕事を探す働く世代が減少し、求職者が希望する仕事と合致しない「ミスマッチ」が起きている。
 
6月31日に発表された最新の5月の雇用動向調査によると、尾鷲公共職業安定所(ハローワーク尾鷲)の有効求人倍率は2.07倍で、前年同月比で0.54ポイント上昇した。2倍を上回るのも5か月連続。県内9地区の職安の平均は1.38倍で、尾鷲職安の数字は突出している。
 
 有効求人倍率は、ハローワークで職を探す人1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。1.0倍を超えて高いほど仕事を見つけやすいが、企業側からすると、人手不足が強まることを意味する。求人数が変わらなくても求職者数が減れば、有効求人倍率は高くなっていく。
 
 尾鷲職安管内の求職申込者は、年々減少傾向にある。5月の有効求人数は対前年同月比で5.5%増の800人だったのに対し、有効求職者数は22.1%減の387人で、求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率は11.7%にすぎず、前年から9.8ポイント下がった。
 
 新年度を控え、年間を通じて最も就職実績が高いはずの3月もハローワークを経由して就職したのは45人で、前年の84人からほぼ半減した。時期を問わず仕事を探しに職安にやって来る人も少なく、事務所内は静かだ。
 
 人手不足が続けば、働き手を確保するために賃金水準などの待遇改善を図らなければならず、事業規模の小さな事業所の中には「賃金を上げられない」と悲鳴を上げるところが少なくない。賃金だけでなく、職種、年齢などの条件面で事業所と求職者が折り合わないために雇用のミスマッチが起きる。
 
 ハローワーク尾鷲の中村克彦所長は、労働力人口が減少の一途をたどる中も、職業紹介の業務を広くPRして、求職者を少しでも増やしていくのが雇用サービス機関の使命だとし、具体的には「インターネットで求人情報を全て見られる。仕事を探す人の求職登録もオンラインでできる。まずはそちらを利用していただき、必要に応じて相談に来所いただきたい」と呼び掛ける。
 
 一方、事業主には求職者の希望賃金額を情報提供し、ギャップを埋める改善を求めたり、求職者の期待と現実のかい離をなくすように、仕事の内容をわかりやすく説明することを指導したりして、求職者と現場の双方のニーズに対応できるように努めている。
 
 人口減少は求職者を減らし、地元事業者の人手不足を招く。この悪循環が続くと、若年層の人材の活用がますます期待できない社会になってしまう。それは社会的に大きな損失である。企業に行政も一体となったミスマッチ解消への取り組みが不可欠だ。

      7月21日の記事

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