「スープを飲ませるためには、ラーメンを食べさせなければいけない」—。私がかねてより思っていることをことわざのようにするとこうなる。意味は「本当に受け取ってほしいものを渡すには、あえて別のものを主役に据える必要があることの例え」とでもしておく。
お笑い芸人の松本人志がある日のラジオで「ものづくりの基本はつじつま合わせ」というふうなことを言っていた。この場合のものづくりは、お笑いをはじめ創作活動全般を指す意味で用いられている。つまり広げた風呂敷をいかにきれいにまとめるのかというのがものづくりの基本であるという。
これは主題や伝えたいことが先にあってそれに向けてつくるというよりは、表現したいことが先にあって、それを自然に述べるために主題を置き受け取りやすいようにする、という創作のありかたを示しているのではないか。
例えばコラムであれば「冬を快適に過ごす方法」を言いたいがために、「冬は寒い」というテーマを後付けすることがあるかもしれない。作品鑑賞時は主題と別に「何を受け取ってほしかったのか」を想像すると楽しい。
何はともあれ、ラーメンはおいしい。
【稜】