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紀南抄「表年と裏年」

 初夏の味覚であるビワがシーズンを迎え、民家の軒先などでは枝もたわわに実っている光景が見られる。実家の庭の木も、小さいながらも今年はたくさん実をつけている。雨が多い影響か少し薄味だが、フレッシュな味わいを楽しんでいる。

 果樹には表年(成り年)と裏年(不成り年)があり、特に温州ミカンやカキなどで顕著に表れるという。昔はその差がはっきりしていたが、剪定(せんてい)や樹勢管理など、生産量を安定化させるための農家の工夫により、近年は差が小さくなっているようだ。

 一方で、野性的に栽培された果樹はその年の栄養状態に合わせて着果するため、豊作の反動で翌年には収穫量が落ちる。今が旬のビワも、あまり手入れせずに放置している家庭も多いため、それが顕著に表れるのかもしれない。

 もちろん気象条件の影響も大きいと思うが、クリやタケノコなども交互に豊作と不作を繰り返しているように感じる。収穫する者側からしたら裏年はがっかりだが、前年にたくさん実を付けた木は大変疲れている。ゆっくり休ませてあげて、また翌年の収穫を楽しみに待とうと思う。

【織】

      5月29日の記事

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