県紀北地域活性化局は10月31日、尾鷲市向井の県立熊野古道センターで防災講演会を開いた。市内外から約80人が集まり、避難生活での健康被害や災害関連死を防ぐための環境づくりや、避難所での新型コロナウイルス感染症防止対策などについて学んだ。
「避難所での健康を守るために一人一人ができること~避難所での感染症対策を含めて~」をテーマに、尾鷲市、紀北町、三重紀北消防組合、三重日産自動車と連携して開催。人と防災未来センターの髙岡誠子研究員が講師を務め、東日本大震災や海外の災害で医療チームとして携わった経験を踏まえながら、避難生活での健康リスクとその対応策を提示した。
髙岡さんは東日本大震災や熊本地震の災害関連死のうち、3割が避難所生活での疲労が原因と指摘。「一人一人が自身の健康を守れるような地域環境を整えることがキーポイントとなる」とし、避難生活への適切な支援、医療機関や福祉施設などの減災の重要性を訴えた。
新型コロナウイルス感染症の影響について、「避難所開設から感染症対策に取り組む必要がある。避難所で感染するおそれもあるが、命を守ることは感染リスクを上回り、避難することを恐れないこと」と語った。「これまで以上に人員が必要となり、各機関との連携と調整が重要となってくる。事前受け付けやゾーニング、感染が疑われる避難者への対応、ゴミの処理など新たなルールを取り決め、積極的に協力を求めなければならない」とし、「新型コロナ防止はインフルエンザやノロウイルス感染症などの防止、ひいては健康問題を防ぐことにつながっている。避難所環境で課題だったことが顕在化しているが、コロナ禍社会に対応するために改善されつつある」とまとめた。
冒頭のあいさつで加藤千速尾鷲市長は、「コロナ対策は日常の一部となっており、避難生活においても重要となってくる。尾鷲市は南海トラフ地震の危険性もあり、避難生活が長期化する可能性もあり、どこまで対策すればいいのか言い切れないところもあり、地域の皆さんと一緒に学んでいきたい」と話した。
講演会に先立って、防災啓発の展示ブースが芝生広場に設けられた。三重紀北消防組合の消防車と救急車の展示のほか、災害時を想定した電気自動車による電源確保の実演が行われた。