太地町立くじらの博物館の稲森館長にクジラが好きな理由を尋ねた時の返答。「大きいから」の一言が胸に残っている。すがすがしい表情の中に童心を見た。あまりにも素直でシンプル。頭でごちゃごちゃ考えるよりも大事なことは、シンプルな気持ちなのだと思う。
でも、大人はいろいろと理性的に考えないといけない場面が多い。気持ちがあっても責任感や技術がなければ仕事にはならないし、説得力がなければ人の心をつかむことも人を動かすこともできない。
「仕事ができる」とは、大概の場合そういった理性的な行動を優先できる人に使うのだろう。しかし本当に人が感動するような仕事をするためにそれだけで足りるのかは疑問だ。
記者であれば、取材現場で理性的に客観的に物事を見ていればそれでいいのかと言うと、私はそうではないと思う。時には主観的に出来事を観察し、自分が何を感じたかを胸に持っておくことも必要だろう。それが後に本質的な興味や問題意識につながったりするものである。
理性的な判断は頭でして、大切なものは胸に掲げておく。そんな生き方ができたら。
【稜】