全国町村議会の功労者表彰を受けた中井前紀北町教育長の任期はコロナ禍と重なる。教育現場に限らず、前代未聞の状況への対応と決断を迫られていた。
感染状況によっては学級閉鎖や学年閉鎖となり、報道にあたっての情報提供は教育長自ら対応することが多かった。児童生徒には兄弟姉妹がいる場合もあり、状況に合わせて慎重な調整があった。風評被害やデマの可能性を摘む姿勢には、頭の下がる思いだった。
教育長として引本小、海野小、矢口小の3校の最後を見届けたが、その際も『廃校』ではなく『閉校』と表現にこだわった。「地元の人たちに少しでも配慮したい」という漢字一文字の差は、おためごかしに映るかもしれないし、ショックがわずかにやわらぐ人もいるのかもしれない。細やかな配慮を大切にする人であることは確か。
今後も、子どもたちの数は減り続けて、おそらく小中学校の閉校が続くが、人口密集地が分かれている紀北町では一点集約も難しい。地方の教育は前途多難だが、教育こそ社会を変える力でもある。
(R)