秋の全国火災予防運動は11月9日(月)から同15日(日)までの7日間実施される。本紙エリア各地の消防と関係機関でも、住宅防火対策や林野火災予防対策を重点に広報や啓発が進められる。火災が起きやすい時季を前に、この呼び掛けを毎年の決まり文句で終わらせてはならない。命と暮らしを守るために、地域全体で防火意識を現実の行動に移すことが求められる。
とりわけ強く訴えたいのが、野焼きの危険性。忘れかけているかもしれないが、近年、広島、岩手、愛媛などで大規模な山林火災が発生、鎮火まで長期化し、甚大な被害が出た。新宮市でも今年5月に熊野川町畝畑の山林で火災があり鎮火まで数日を要した。新宮市は野外焼却、いわゆる野焼きは法律で原則禁止されていると周知している。例外として認められる場合は限られており、その際も事前に消防署への届け出が必要で、指導事項を守らなければならない。それでも現実には、少しの枯れ草だから大丈夫、自宅の敷地内だから構わないという安易な意識が残っていないだろうか。乾燥した日や風の強い日には、わずかな火でも一気に燃え広がる。ひとたび延焼すれば近隣住宅や山林を巻き込み、取り返しのつかない被害を招く。煙や臭いによる生活被害も軽視できない。火災予防運動のこの時期こそ、野焼きをはじめ、火の危険性を周知徹底すべきだ。
もう一つの課題は、住宅用火災警報器(住警器)の設置と維持管理。新宮市は火災の早期発見のため、住警器の定期点検と10年を目安とした交換を呼び掛けている。設置していても、電池切れや機器の劣化で作動しなければ意味はない。就寝中の出火や発見の遅れは、そのまま逃げ遅れにつながる。住宅火災で犠牲を減らすには、住警器を付けることと、きちんと鳴る状態を保つことの両方が欠かせない。新宮市消防本部は、取り付けが難しい世帯への支援や、高齢者世帯への無償配布にも取り組んできた。市の地域防災計画でも、住警器の設置促進を積極的に進める方針が示されている。実際の住宅火災で住警器によりいち早く避難できたため人的被害に至らなかった事例もある。行政は周知をさらに徹底し、自治会や地域も声を掛け合いたい。設置率の向上は数字を競うためではない。いざという時に命を守れる家を一軒でも増やすためである。
火災予防に奇策はない。火を甘く見ないこと、危険な焼却をしないこと、警報器を備え点検すること。その当たり前を徹底できるかどうかが被害を左右する。「火の用心」を標語だけに終わらせず、地域の習慣として根付かせたい。この地域の秋を安全に過ごせるかどうかは、私たち一人一人の備えにかかっている。
