東紀州(紀北)防災ネットワーク推進会議の会合が15日、尾鷲市坂場西町の県尾鷲庁舎で行われた。防災機関やライフライン事業者などの担当者19人が情報共有を図った。
三重大学大学院工学研究科教授で、防災・減災研究センターの川口淳センター長が「巨大災害に備える 官民一体となった災害対策の重要性」をテーマに講演した後、情報共有と意見交換を行った。
川口センター長は、伊勢湾台風をきっかけとした災害対策、防災の歩みを概説。阪神淡路大震災では、住宅の崩壊などに巻き込まれた人のうち、救助隊が救助した人より、家族や近所の人、通行人などの自助・共助で救助された人が多かったことなどを説明。東日本大震災以降は、国土強靭(きょうじん)化の考え方が進んだことを紹介した。一方で、県内では引き続き住宅の耐震化が進んでいないとの認識を示したほか、地方では高齢化や孤立のリスクが課題と述べた。
昨年の日向灘沖地震による「南海トラフ巨大地震臨時情報」や、カムチャツカ半島沖地震に伴う津波警報の発表時に分かった問題点にも言及した。
川口センター長は「マニュアルは万全にはならない」と強調。被害想定も一つの仮定であり、マニュアルに頼ってはならないと述べる一方、マニュアルを作る過程が重要との認識を示し「限られた資源で最大の効果を上げること、優先順位をつけることが大切」と説いた。
意見交換では、尾鷲海上保安部と中部電力パワーグリッド尾鷲営業所が7月16日に行った合同訓練について発表。海保の担当者は「現実には、航路啓開が必要になる。海保も船を退避させており、津波警報解除後72時間は人命救助に注力している」などと述べ、早期に人員輸送を担うことは難しいとの認識を示した。半面「2、3年で乗組員が変わる」として、訓練を継続して実施する必要があるとした。
JR尾鷲駅の担当者は、津波警報が発表された再、社員全員が避難したことを報告。社員は単身赴任者がほとんどで尾鷲の地理に詳しくないこと、利用客や近隣住民に声を掛けたが誰も避難に応じてくれなかったことなどを説明した。中村山に避難した時、郵便局員が水や食料など非常用物資を持ってきており分けてもらったことが助かったことも紹介し、駅での備蓄や配布に協力できる、と伝えた。
