新宮市の王子神社では先月から、より多くの人に神社を知ってもらい、参拝の思い出にしてもらおうと、境内に御朱印を設置している。参拝者が自由に受けられるようにしており、そばに置かれたノートには、参拝した日付や名前のほか、旅の思い出やメッセージなどが書き込まれている。東京や大阪など国内各地に加え、ドイツや中国など海外から訪れた人も言葉を寄せている。
熊野九十九王子の一つ
同神社の境内には熊野九十九王子の一つ「浜王子」の跡があり、県指定文化財となっている。九十九王子は、熊野詣の道中に設けられた王子社の総称で、主に12~13世紀、皇族や貴人の熊野詣が盛んになる中で整備され、参拝者の守護などが祈願された。
浜王子は、古くは海神を祀(まつ)る海浜の宮であったと考えられ、熊野信仰の発展とともに熊野権現の御子神を祀る王子社として知られるようになった。古代の王子社としての記録は確認されていないが、1473(文明5)年の「九十九王子記」に「浜王子」と記されているのが初見とされる。明治時代に「王子神社」と呼ばれるようになり、その後の神社合祀で阿須賀神社に合祀されたが、1926(大正15)年に復興された。
かつて周辺一帯には農地が広がり、境内には王子ヶ浜の海浜地も含んでいたという。1946(昭和21)年の南海大地震後、応急に住宅建設が必要となり、社地を含む周囲の国有地が払い下げられた。海辺の熊野参詣道の成立や古道のルート、その性格を考える上でも貴重な場所とされている。
現在も九十九王子をたどって熊野を巡る人が同神社を訪れており、御朱印を通じて、かつて熊野詣の人々が立ち寄った浜王子に、国内外から訪れる人との新たなつながりが生まれている。
地域安全や五穀豊穣願う
同神社で17日、夏の例祭が営まれた。同神社氏子総代会など関係者12人が参列し、実りの秋を前に、地域の安全や五穀豊穣(ほうじょう)、豊年満作などを祈念した。
神事では、西俊行宮司が祝詞を奏上し、参列者が玉串をささげて祈願した。このあと、隣に祀られている正一位玉廣稲荷大明神、二葉稲荷大明神の社でも同様に神事を行った。総代会の濵仲勉会長は「地域の繁栄と皆さんの健康を祈念しました」と話した。
同神社は、神武天皇の2人の兄とされる稲飯命(イナイイノミコト)と三毛入野命(ミケイリヌノミコト)を祀っており、毎年1月1日の元旦祭、2月17日の例大祭、8月17日の例祭を斎行(さいこう)している。下熊野地地区の鎮守社として、総代会が中心となって神社を守り、祭事を受け継いでいる。
