紀北町役場で5日夜、観光インフルエンサーによる講演会が開かれた。地方の観光情報を発信しているシア・チュアン・トニさんが「インバウンド集客の新常識! SNSとインフルエンサーの活用法」をテーマに講演。町内外から約30人が集まり、SNSを活用した集客方法、情報発信や動画制作のコツなどを学んだ。
シアさんはインスタグラムのフォロワー数が36万人以上いる。多気町を中心とした周遊観光にも携わっていて、紀北町でも活動している。シアさんは、「ゴールデンルート(東京、富士山、京都、大阪間の観光ルート)から離れた場所は、まずはどのように人を呼び込めるか、というのが課題。ゴールデンルートにないものをアピールしていくか」と語った。また、「インフルエンサーの活用は、外部の人が引き付けられる特別な体験の発見には必要不可欠」「フォロワーとの信頼関係と、経験を通じた具体的なエピソード『本物の口コミ』を生む」などと説明した。
SNSの中でもインスタグラムが観光集客に適しているとし、コンテンツ(内容)を見た人と双方向のコミュニケーションが取れることがSNSの特徴と説明。「観光において反応が見えることはとても強い」と述べ、「実際に雪国の観光地を紹介したところ、氷瀑よりも除雪車に乗っている時が一番好感があった」「インフルエンサーのフォロワーを流入させ、自分たちのSNSのファンを集めることが理想的。インフルエンサーからノウハウを学び、自分たちの価値を見える化できるし、応援してくれる人との距離を縮めて学んでいくこともできる」と有用性を訴えた。
紀北町でも観光のための現地調査をしていて「やはり、一番は熊野古道ではないか。ただ歩くだけでなく、例えば当時の衣装作り体験を取り入れれば価値が上がらないか」などと提案。また「町内だけで考えても、観光の価値が当たり前でなかなかアイデアが出てこない」と指摘。実際に講演会前に撮影して制作した町内の干物をアピールする動画を紹介し、外国人に好かれるキーワード、字幕の付け方なども具体的に紹介した。
普段の努力がコンテンツ
動画作りのコツでも「発信するコンテンツをつくる時は、主人公が必須。主人公がいない映画は見たことがない」とアドバイス。「人は人から商品を買う。応援できる人、共感できる人が選ばれる。実際に会える人だとさらに効果的。努力を伝えるプロセスを見せ、普段の努力こそコンテンツにできる」と語った。「英語ができないことは課題にはならない」と述べ、生成AIツールを使った翻訳の実演も行った。
出席者から「漁師をやっていて、動画をつくっているが、海外の人に届いていない。なにか気をつける点はあるか」「今日はSNSの事情やインフルエンサーについてよく分かった」「情報を継続的に発信していくためにはどうしたらよいか」と質問や感想が寄せられた。
尾鷲市でインバウンド推進担当の地域おこし協力隊の本多良行さんは「SNSはやらなければならない課題の一つで、今日の話はものすごく参考になった。実際に運用してメリットを見極めながらしっかりと情報を発信していくことにつなげたい」と話した。