日曜日や祝日でも、イベントや祭りで取材に向かうことはままある。たまにぽっかりと午前中が空いた日は、自宅から歩いて一分以内に行ける喫茶店のモーニングが楽しみだった。常連というほど通ってはいなかったが、そういう店が閉店するのは、やはりさみしい。
その店には、トーストもピザもあったが、一番よく頼んでいたのは玉子サンド。ふわふわとした食感と絶妙な塩味がなかなか好きだった。布団の誘惑を断ち切って出かけ、温かいコーヒーでゆったりと目を覚まし、玉子サンドを頬張りながら「今日は何をしようかな」と考えるのは、割と至福の時間ではあった。
まちで生きる時間が長くなるほど、なじみの人、よく行く店、好きなメニューが増えていく。人口が減り続けるまちでは、失っていくことの方が多いのかもしれない。また一つ、ちょっとした居場所を失った気分ではある。
地域にはまだまだ店もあり、少し歩く距離が長くなるだけのこと。それでも、あの玉子サンドの味は時折思い出す気もする。
(R)