ネットで動画を物色していると、タイトルでよく「○○が××すぎてヤバい」というような文言を見かける。この「ヤバい」という表現が面白い。素晴らしい・素敵(すてき)というポジティブな使われ方をしているものもあれば、ネガティブな意味合いのものもあるのだ。
ではここで、「ヤバい」を盛り込んだ会話例を考えてみる。「あの店員の髪の毛ヤバくない?」「マジヤバい」「ね、ほんとヤバい」。…何を読まされているのだろうと思うかもしれないが、こんな会話が今の世では成り立つのだ。これだけでは、店員の髪がどのように「ヤバい」のかさっぱりわからない。さらに注目すべきは、この会話の2人は、共通認識があるかに見えて、実は全く違う意味で考えている可能性があるということだ。
しかしこの「ヤバい」については、「日本語の語彙が失われている」などと嘆くほどのことでもないとは思っている。これまでもいくつもの言語表現が老いて消え、新しく生まれてきた。ただ、「ヤバい」という短絡的な言葉につられて動画の再生ボタンを押してしまう自分にちょっぴり悔しさを感じるのである。
【稜】