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紀南抄「自助」

 防災月間の9月は、各地で取り組みが行われた。その中で、「自助」という言葉を聞くと、いつも引っかかることがある。

 仮の話だが、津波がすぐそこに迫っていて、近くに助けを求める高齢者がいるとする。自分は健脚だが、その人を背負うと遅れて津波に飲み込まれるかもしれない。こんな時、自分ならどうするだろうかと考えてしまうのだ。

 今の冷静な頭では「先人あっての今なのだから、手を差し伸べるべきだ」と思える。それが”正しいこと”のように思える。しかし、実際に死の恐怖にさらされた極限の状況で、その理想を貫けるだろうか。背負って2人とも死ぬとしたら、それが正解かどうかも正直よくわからない。

 ただ1つ明らかなのは、その高齢者を置き去りにして自分だけ生き残ったとして、悔いが残るだろうということ。私はもしかしたら、その一点だけで動いてしまうかもしれない。つまりは、自分のために人を助けるのである。

 ここまで考えて、改めて「自助」「共助」とは何かと振り返る。人を救うことで救われる生き物。助け合いの根本は、やはり自分を大切にすることなのだと思う。

【稜】

      9月30日の記事

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