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紀南抄「京アニと『日常』」

 「日常」というアニメを見始めた。ほんわかとした雰囲気の中、高校生がヤギに乗って登校してきて「ヤギは校則違反ではありません」と言い張ったり、小さな女の子「はかせ」が自分で開発したロボットと生活していたり、教師の下駄箱に弥勒菩薩の木像が入っていたりと、なかなかぶっとんだ世界観。日常の中の非日常、非日常の中の日常を面白おかしく描くシュールな作品で気に入っている。

 そのハチャメチャを成立させているのは、随所で出てくる高いアニメーション技術。お弁当の最後にとっておいたタコさんウインナーをポロっと落とすシーンでは、キャッチするまでに同級生のモヒカンを通り、キャッチャーミットを通り、それでもすり抜けていくウインナーのスピード感、切迫感、作画の本気具合に笑いがこみ上げる。

 制作は京都アニメーション。事件の8年前のものだ。京アニ放火からは18日で5年を数える。社員36人が亡くなり、32人が重軽傷を負った。宇治市内の公園には今月、36羽の鳥が羽ばたく「志を繋(つな)ぐ碑」が完成した。彼らの圧倒的な技術と情熱は、今も作品に生きている。

【稜】

      7月18日の記事

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