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紀南抄「主張は言葉に隠す」

 本当に言いたいことは、言わなくていいことに紛らわせて書くのがよい。
 
 例えば「戦争は人殺しを容認するものだから反対だ」という意見を言いたいとする。しかしそれを真っ向から書くと、少しテーマが重たくて読む側にも気合いが必要になる。読み手にあまり多くを求めてしまうと、読んでもらえる確率が下がる。確率が下がれば、言いたいことを言い切れた文章でも、読む人の数が少なくて結局はほとんど伝わっていないのと同じになる。
 
 ではどうするか。本当は言わなくていいけど読み手が受け取りやすいことを主題に置き、本当の主張はサブテーマとして織り交ぜる。例えば「殺人にはいろいろな種類がある」と書き始め、テーマを「殺人の種類」にする。そのうちの1つとして「戦争」を持ち出し「しかしこれは人殺しを手段として容認するようなものだから、私個人としては反対だ」とする。これなら自然に主張を伝えられる。木を隠すなら森の中だが、主張を隠すなら主題の外だ。
 
 ただ一番の問題は、この文章は言いたいことを思い切りそのまま主題に据えてしまっているという矛盾である。
 
【稜】

      5月23日の記事

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